我部 聖

教員紹介

法経学部 法経学科

我部 聖 (GABE Satoshi)

所 属法経学部法経学科
専 攻沖縄近現代文学、沖縄近現代思想史
学位(発行機関)文学修士(琉球大学)
生年等1976年
研究活動

 これまで私は、沖縄が近現代の歴史のなかで育んできた思想について、文学研究と思想史に足場を置いて研究してきました。大学院入学後は、1950年代の沖縄における文学表現(小説・詩歌・評論等)、具体的には大城立裕や『琉大文学』同人であった新川明・岡本恵徳の作品の分析に取り組んでいます。

 また山之口貘をはじめとする沖縄の表現者たちが、近代期に新たに導入された「標準語」で表現を試みるなかで、「沖縄語」と近代「日本語」とのあいだで引き裂かれるような葛藤を抱えながらも、独自の思想を開花させてゆく姿にも注目してきました。さらに、新川明の詩の分析を通じて、日本の植民地化の傷を負い続けている在日朝鮮人の詩人・金時鐘(キム・シジョン)の思想とのつながりが発見できました。

 こうした言葉を通じての文学思想史を今後も研究していきたいと考えています。『琉大文学』など文芸雑誌を中心に、アメリカ占領時代の沖縄文学史について同時代のアジアの動向や社会文化的な視点から検討し、また近代期についても伊波普猷や比嘉春潮らの言説を読みなおしながら取り組んでいきたいと考えています。

 近代・沖縄戦・米軍占領の歴史的記憶を「学びなおす」(屋嘉比収)ことを通じて、沖縄を思考する言葉の可能性について研究していきたいと思います。

教育活動

 学部では、「沖縄近現代思想史」「近代沖縄文学」「現代沖縄文学」の授業やゼミを、大学院では、「沖縄思想史特論」「沖縄文化研究特論」を担当しています。

 「沖縄近現代思想史Ⅰ」では1879年の琉球処分から沖縄戦までの沖縄の近代期を、Ⅱでは1945年~72年までのアメリカ占領時代や72年以降の「復帰」後の時代を対象に、近現代の沖縄に生きた人びとが事件や出来事に直面するなかで何を考え、どのように行動したのかについて講義しています。

 「近代沖縄文学」では、明治・大正・昭和戦前期の沖縄を描いた小説を、また「現代沖縄文学」では、アメリカ占領時代(1945~72年)や施政権返還後(1972年以降)の沖縄の現代文学を読んでいます。

 沖縄をめぐる文学・思想のテクストを精読しながら、近現代の沖縄を生きた人びとの体験を多角的に考える授業に取り組んでいます。自らの生きる場に根をおろして、言葉と向き合いながら思索を深めた文学作品を読み・考えることは、現実をとらえる視点を豊かにし、生のかたちを多様に思考する想像力の拡張につながっていくと考えています。切実な言葉がわかりやすい表現に置き換えられ、思考する力が失われつつある社会のなかで、文学や思想の言葉は、思考の杖となって困難な状況を切り抜ける手がかりを示唆してくれます。授業を通じて、受講生それぞれの感受性の違いを認識しあいながら議論の共同性をつくっていきたいと考えています。

所属学会

日本近代文学会、沖縄文化協会、沖縄法政学会

著作・論文
  • ○「他者とのつながりを紡ぎなおす言葉-新川明と金時鐘をめぐって」(DeMusik Inter.編『音の力 沖縄アジア臨界編』インパクト出版会、2006年)
  • ○「岡本恵徳試論-戦争・記憶・沈黙をめぐって」(『沖縄文化研究』第34号、法政大学沖縄文化研究所、2008年3月)
  • ○「継続する戦争への抵抗-池沢聰『ガード』論」(『日本近代文学』第78集、日本近代文学会、2008年5月)
  • ○「語りえない記憶を求めて-大城立裕『二世』論」(藤澤健一編『沖縄・問いを立てる6 反復帰と反国家-「お国は?」』社会評論社、2008年)
  • ○「山之口貘『会話』を読む-近代沖縄文学の葛藤」(勝方=稲福恵子ほか編『沖縄学入門』昭和堂、2010年)
  • ○「占領者のまなざしをくぐりぬける言葉―『琉大文学』と検閲」(田仲康博編『占領者のまなざし 沖縄/日本/米国の戦後』せりか書房、2013年)